■ 周産期メンタルヘルス・ケアに関する提言 ■

1)
現状:社会の変化に伴い、子どもを取りまく環境も複雑・多様化している。母親をはじめとする養育者のメンタルヘルスは、子どものこころ成長や発達に大きく、かつ長期にわたって影響を与えることが報告されている。その影響を最小限にすることが、よりよい人生の素地、社会の基盤作りに大いに有用であろう。周産期メンタルヘルス・ケアの充実は、子どもたちのみならず、養育者さらには社会全体の支援につながると考える。
 2011年3月11日に起こった東日本大震災では、それまでの周産期メンタルヘルス・ケアの不足部分が露呈する結果となり、多くの母親、父親、あるいは主要養育者たちが十分な支援を受けられないまま孤立と不安にさらされる結果となった。また、良好な養育環境を享受することは、子どもの権利条約で謳われたようにすべての子どもたちの権利であると我々は認識する。社会としてどうするべきか、子どもや母親が孤立しないためにどのようなスキルが必要なのか、真剣に検討し、行動に移す必要がある。

2)
ビジョン:産前・産後の母親、そしてその支援者である保健師、助産師、看護師、産婦人科医、小児科医、保育士、養護教諭、児童相談所等職員、精神科医、精神保健福祉士、ソーシャルワーカー、臨床心理士、警察官その他の各種専門職種を支援するシステムの強化が必要である。
上記の現状認識とビジョンをもとに、日本周産期メンタルヘルス研究会は具体的な提案を以下の如く行う。

3)
具体的な提言:
①周産期メンタルヘルス・ケアに携わる人材研修
  1. 1. 周産期メンタルヘルス研究会が上記の研修や人材を提供できることを、全国の自治体、保健所、保健センター等に向けて告知する
  2. 2. 周産期メンタルヘルス研究会が、現場で第一線にいる保健師、助産師等と周産期メンタルヘルスの専門家とがつながり、相談し、連携をする場を作る役割を担えることを提案する
②全戸訪問などで掘り起こした周産期メンタルヘルス・ケアのニーズに対する受け皿の提案
  1. 1. 産前・産後の母親の支援者である助産師、保健師、看護師、産婦人科医、小児科医、保育士、養護教諭、児童相談所等職員、精神科医、精神保健福祉士、ソーシャルワーカー、臨床心理士、警察官その他の関係職種がうまく連携しあえるような仕組みづくりを提言する
  2. 2. 社会資源の活用、民間団体、NPOとの連携について情報提供および率先してつなぐ活動を提言する
③地域保健衛生に従事する立場にある行政や医療団体に、より積極的な介入を提案
  1. 1. 心理的支援を必要とする人ほど、逆に自分からは支援を求めない。医療・看護・福祉・教育のプロとして、クライエントの必要性に応じた心理・社会的支援に対する必要性を我々は認識する
④看護教育のさらなる充実
  1. 1. 基礎教育:看護学科、大学院などのカリキュラムや国家試験における周産期メンタルヘルス・ケア領域の内容を拡大することを提言する
  2. 2. 卒後のトレーニング・講習会・認定制度を本研究会として作り、生涯教育を受けられる機会を提供する
  3. 3. 教科書等の教材を作り、短時間で効率よく学べる環境を作る
  4. 4. 将来的には、周産期メンタルヘルス・ケア領域に限り、産後の期間限定で保健師・助産師への診断権、診療権を認めていく方向のロビイスト活動を行う
4)
結語:以上、先駆的かつ充実した支援を養育者及び各種専門職に提供していくことが、本研究会の使命と考える。

                  2012年11月10日
                  日本周産期メンタルヘルス研究会ワーキンググループ
                  理事:宗田 聡、春名めぐみ、斧澤克乃、吉田穂波
                  顧問:北村俊則