■ ご挨拶 ■

 日本周産期メンタルヘルス学会は、周産期のメンタルヘルスに関する研究の推進と臨床研究者の相互協力、および、国内外の関連学会との連携・交流を図ることを目的に、2003年に設立されました。2014年度からは本学会の機関紙として「日本周産期メンタルヘルス学会学会誌」を刊行し、学会運営に務めて参りました。
 さて、近年、日本の周産期メンタルヘルスを取り巻く状況のなかで、注目すべき大きな2つのトピックスと遭遇しましたので、一言述べさせて頂きたいと存じます。
 1つめは、日本でも妊産婦の自殺の実態が明らかになったことです。2003年の英国の妊産婦死因の調査では、身体合併症を抜いて、自殺がトップであることが判明して大きな話題になりました。日本でも、2016年に東京都監察医務院と順天堂大学による、東京都23区の妊産婦死亡に関した10年間の調査では、妊娠期から産後1年以内に自殺した女性は63名と判明しました。しかも、精神科既往歴のあった妊産婦の割合は、妊娠期には40%、産褥期には60%であり、高い頻度でした。海外の周産期の自殺率を比較してみますと、英国、スウェーデン、カナダが2.3~3.7/出生10万であったのに対して、東京23区の自殺率は8.7/出生10万と極めて高いことも判明しましました。そこで、政府は、産後うつ病などによる妊産婦自殺防止に本格的に乗り出そうと、厚生労働省は妊産婦死亡の死体検案書などからの調査による自殺者数の調査を開始しました。
 2つめは、産後健診におけるメンタルヘルスのチェックが充実しました。産婦健康診査事業(産後健診)の実施に当たり、1)産後うつ病の予防や新生児への虐待防止等を図ること、2)病院並び市町村が留意すること、3)産後健康診査では、従来の産後1ヵ月健診事業以外に、産後2週間健診を追加して、産後早期の産婦の精神状態の把握が強化されました。日本周産期メンタルヘルス学会は、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会と共同して、産後健診におけるメンタルヘルス強化についての厚労省の策定に関与して参りました。産科医療機関におけるメンタルヘルス対策の負担が今まで以上に重くなりますが、周産期のこころの病気の早期発見、早期治療が進展することを願っています。
 日本周産期メンタルヘルス学会は、医師(産科医、精神科医、心療内科医)のみならず、助産師、保健師、看護師、臨床心理士など、周産期の幅広い分野の会員から構成されております。今後、院内リエゾン、地域リエゾンを通して、一層広範な領域の方々にも参加して戴き、周産期メンタルヘルスに関する医療・保健の提供と日本におけるオピニオンリーダーとしての情報を発信して参りたい所存でございます。
 今後とも、日本周産期メンタルヘルス学会へのご参集と、会員各位の連携をお願いする次第です。

2018年4月吉日
日本周産期メンタルヘルス学会 理事長
岡野 禎治